茅野市文化芸術推進事業レポート
芸術×文化×くらし
地域そのものが
ミュージアム!
レポート

ちの ミュージアム・ピクニック

ピクニック2
縄文と八ヶ岳の恵み
2018.11.24
縄文から続く「鹿狩り」の伝統
ピクニックルート

茅野市役所→❶御射鹿池→❷京都造形芸術大学附属康耀堂美術館→❸与助尾根遺跡(縄文時代の復元住居)→❹茅野市尖石縄文考古館→❺茅野市神長官守矢史料館→❻カントリーレストラン匠亭(信州ジビエ)

コンセプト

茅野市内から発掘された二つの国宝土偶。他に類を見ないほど美しく完成度の高い二つの土偶は、茅野周辺が縄文時代に大きく栄えていたことを示しています。なぜ栄えていたかわかりますか?その答えのひとつは「豊かな山の恵み」があったから。清らかな水、多くの実をつける豊富な木々、そして貴重な食料となった動物たち。なかでも鹿は、縄文時代から現代まで、重要な「狩りの獲物」として扱われてきました。話を聞いて、目で見て、味わって。縄文から続く八ヶ岳の恵みが、現在もこの地で息づいていることを感じてもらう旅です。

レポート
1. 御射鹿池

最初にご覧いただいたのは、昨今、絶景スポットとして人気を集めている「御射鹿池(みしゃかいけ)」。水面に逆さに映る木々の姿が美しく、日本画家の東山魁夷画伯が絵の題材にしたことでも知られます。

美しい御射鹿池ですが、実はこれは人の手でつくられたため池。冷たすぎる山の水を農業に利用するため、一度水をためてお日様に当ててあたためるのを目的としており、今も現役で利用されています。 「御射鹿池」という変わった名前は、この場所がかつて、「諏訪大社に捧げるための鹿を狩った場所」であることを示す「御射鹿」と呼ばれていたことに由来しています。

2. 京都造形芸術大学附属康耀堂美術館

次に訪れたのは康耀堂美術館。尖石縄文考古館のすぐ近くにあり、高い木々に囲まれた静かな空間は、知る人ぞ知る癒しのスポットです。八ヶ岳を深く愛した初代館長佐鳥康郎氏のコレクションを展示した館内には、山の自然を題材にした作品も多くあり、こうした芸術を産み出す原動力となることも「山の恵み」のひとつだということを実感しました。

3. 与助尾根遺跡(縄文時代の復元住居)

続いて訪れたのは、尖石縄文考古館に隣接する与助尾根遺跡。復元されている6つの竪穴式住居は、学芸員さんのお話によれば「同時期に存在していた可能性が高い」住居とのこと。つまり縄文時代のある時期には、わたしたちが見ているのに似た光景が広がっていたようです。周囲に生えるドングリや栗の実をつける木々も当時の状況を推測して植えられており、近くを流れるせせらぎも「おそらくは縄文時代からこの場所にあった」もの。 縄文のムラのあとが見つかる場所には「きれいな水」と「食料となるドングリや栗の木」があり、もうひとつ重要なのが貴重な食料となった鹿などの獣。御射鹿池の近くからも当時の落とし穴のあとが見つかっているそうで「ここに住んでいた縄文人が、みなさんが先ほど見てきた御射鹿池のあたりまで、獲物が罠にかかっていないか見に行っていたかもしれません」

4. 茅野市尖石縄文考古館

尖石縄文考古館では、特別にご用意いただいた「ドングリクッキー」を試食させていただきました。美味しそう!と口にしたみなさんの反応は「……」。食べられないことはないが、美味しいとは言えない、というのが大方の感想だったようです。「こればっかり食べていたら、やっぱり肉が食べたくなるよなぁ」というのは参加者のお一人の声。

いよいよ、国宝の土偶とご対面ですが、残念ながらこのとき国宝2点はパリの展覧会に出張中で、展示されていたのは精巧なレプリカ。それでも、土偶を掘り出したときの状況なども交えた学芸員さんの熱い語りに、参加者は真剣に耳を傾けていました。「土偶の完成度がここまで高かったのは、この場所が当時文化的に最先端な場所だったことを示しています」

5. 茅野市神長官守矢史料館

鹿などの獣が食料として重要だったのは、縄文時代に限りません。次に訪れた神長官守矢史料館では、壁から鹿やイノシシの頭が突き出した、少々ショッキングな光景が広がっています。これは、江戸時代に諏訪大社で行なわれていた「御頭祭」というお祭りを再現した復元展示です。当時、神様にお供えするために75頭もの鹿の頭が捧げられていました。現在でも、さすがに75頭の鹿の頭を捧げることはありませんが、御頭祭は毎年4月15日に行なわれています(剥製の鹿の頭を何頭かお供えするようです)。 日本の神社のお祭りの多くは農業に関わるものですが、いかにも「狩猟」を思わせる御頭祭の展示は、この土地にとって鹿を狩ることが非常に重要なものであったことを教えてくれました。

6. カントリーレストラン匠亭(信州ジビエ)

ここまで「鹿狩りの歴史」を見てきましたが、茅野では現在でも鹿を狩っている方がいます。最後に訪れた「カントリーレストラン匠亭」は、現役のハンターでもある店主が鹿などのジビエ料理を振る舞うレストランです。 茅野市では現在、鹿は農業に被害を与える「有害鳥獣」として問題になっています。大切な田畑を守るための駆除はハンターの大事な仕事で、捕らえた獣の肉を有効に利用するジビエ料理は「持続可能な社会」づくりに重要な要素でもあります。

ハンターとしてのリアルな話を、マスターからお聞きしたあとは、お待ちかねの試食タイム。ジビエは癖が強くて苦手、という方もいますが、美味しく食べるには捌き方が重要で、きちんと捌いてから調理した鹿肉は「意外にも癖が少なくて美味しい」とたいへん好評でした。

参加者より

「個人で訪問しただけでは理解できないことが判って良かった」

「縄文時代が思っていたより今の私たちの暮らしに近いことがびっくりでした」

「自分が住む茅野市の良いところを、各専門家の方にお話をうかがえて有意義で楽しかったです。」

「たのしかったよ。また来るね」(10歳)

「自分では多分行かなかっただろう、という新しい世界を広げていただきありがとうございました」

「知る!ということで次の疑問が生まれ、その疑問を解決していくとさらに色々知りたくなりますネ」

「茅野という土地に直接ふれて、ここに住まわせていただいているありがたさを今回で特に感じました」

「とても『粋』なセンスのあるイベントと思います」

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